設立趣旨書

2002年1月9日

情報化社会の急速な発展に伴い、情報技術の重要性が高まり、ソフトウェアが重要となってきている。一般的にソフトウェアは、市場において売買される工業製品としてのみとらえられているが、ソフトウェアはコンピュータというフィールドにおける人間の知的活動の成果でもあり、その知的活動は、芸術や文学などといった活動との本質的な違いはない。我々は、ソフトウェアを工業生産物という枠組からではなく、人間の知的活動の成果ととらえ、人間とソフトウェアの関係を改めて考え直す必要性があると考えている。

情報技術の急速な発展と社会への導入は、いくつかの歪みを引き起こしている。ネットワークの安全性を脅かすセキュリティの欠如、ソフトウェア技術に関する知識の寡占化および開発の停滞と消失は、大きな社会的問題となっている。

我々は、情報技術と社会の問題としてこれらの問題に立ち向かい、情報化社会の健全な発展を目指すことができないかと考えた。そして、このためには、ソースコードの入手可能性をソフトウェアの公開と不可分のものとするフリーソフトウェアの考え方がもっとも適切であり、それに関する継続的活動が必要であると結論するに至った。よって、ここにその活動を行う組織として、特定非営利活動法人フリーソフトウェアイニシアティブを設立するものである。

ここで、我々は、フリーソフトウェアとは、以下の4つの自由を持つソフトウェアであると定義する。

  1. 目的を問わずプログラムを実行する自由
  2. プログラムがどのように動作しているか研究し、必要に応じて修正を加え取り入れる自由
  3. 身近な人を助けられるよう、コピーを再頒布する自由
  4. プログラムを改良し、コミュニティ全体がその恩恵を受けられるよう、改良点を公衆に発表する自由

上記の定義は、文書にも準用され、我々はそれをフリードキュメントと呼ぶ。

我々は、フリーソフトウェアおよびフリードキュメントに関して、開発者および利用者を支援し、ソフトウェア技術の啓発と普及に努める。具体的な活動としては、フリーソフトウェアおよびフリードキュメントの情報収集と発信、国際的な交流の推進、技術講座・セミナーの開催、および開発・導入・運用の支援を行う。

この活動は、特定の企業の利益ではなく、社会の利益の観点から組織化される。個の立場の活動によって、産業あるいは企業活動による情報技術の開発を補完し、情報技術の健全な発展をもたらすことができる。

この活動によって、ソフトウェアを作る人と使う人を分け隔てせず共通のコミュニティとしてこれらをつなぎ、誰もが安心して使える高品質のソフトウェアを継続して開発し、それを社会に安定して供給することが可能となるだろう。

ここに、広くこの活動に賛同する個人ならびに団体、企業に参加をよびかけ、個の創造性の発揮による経済ならびに文化の発展に寄与するものとなるべく、活動をはじめるものである。