Debian Mini-Conf 2005 / CodeFest? 2005 報告
2005年2月28日から3月3日まで北京で開催されたAsia Debian Mini-Conf 2005 とCodeFest?2005 (3/2-3/3)へ参加してきました。備忘録がわりにランダムに 書いていきます。
Asia Debian Mini-Conf 2005 / Asia CodeFest 2005 報告
〜ちょっとに北京に行って来ました〜
特定非営利活動法人 フリーソフトウェアイニシアティブ
鈴木裕信
* はじめに
2005年2月28から3月3日まで北京開催されたDebian Mini-Conf 2005(2/28-3/1)
と CodeFest 2005(3/2-3/3)へ参加してきました。備忘録がわりにランダムに
書いていきます。
この旅は、「花粉だらけの日本を抜け出す」ということではなく、ちょっと真
面目に次の2点に関してチェックを入れてこようかと思ったからです。
(1) 運営状況のチェック
(2) CJK圏での草の根的活動の動向チェック
第一点目は今後FSIJがアジア圏内で協力をどうすべきなのかの考慮材料とする
ためのものです。北京で開催される草の根ボランティアの運営状況を観察する
ことで、同様な主旨の会合が開催される時に参考となるでしょう。そもそもア
ジア圏内で、このようなボランティアベースの国際カンファレンスが開かれる
ことは滅多にありません。日本以外の国ではどう対応しているのか観察するの
には良い機会でしょう。
第二点目は、アジアのCJK圏内の草の根レベルの活動の動向を調べるためです。
ここで国ではなく意図的に言語圏で区別しています。中国語圏(中国/台湾/
香港)の経済規模は、既にかなり大きいことを認識せねばなりません。2003年
のGDP比較で比較すると中国語圏の経済規模は日本の約4割強になるほどです。
このようにかなり経済規模的には大きいマーケットといえます。しかし、今ま
でCJK圏でのLinux の状況は常に政府や企業の観点から語られてきたものであ
り、草の根的な情報は断片的な形でしか上がって来ていませんでした。今回は、
ボランティアベースの内容を知るには良い機会といえるでしょう。
* 概要
2月27日から3月4日まで中国政府は中国 Open Source Week 2005ということで、
Asia Debian Mini-Conf 2005(2/28-3/1)、 Asia CodeFest 2005(3/2-3/3)、
The 5th Asia Open Source Software Symposium 2005 (3/2-3/4)の3つの会合
を開催しました。ADMC2005実行委員長はRoger SoというDebian方面ではよく知
られている人らしく(私はDebianな人ではないので、その辺はよくわからない)
オーストラリア出身で現在は香港にいるとのこと。
会場はADMC2005とAOSSS2005 が北京市内にある北京新世紀日航飯店です。
CodeFest 2005 が北京郊外にある中国のシリコンバレーこと中関村ソフトウェ
アパークの国家応用軟件産品質量監督検査中心でした。ここにあるビジネスコ
ンプレックスのビルの中に入っています。このビルにはベンチャー企業のオフィ
スやインテルなど有名企業のブランチが入っています。
尚、3月2日から3日4日まで開催されたThe 5th Asia Open Source Software
Symposiumには筆者は参加しませんでした。理由は、この会は各国から政府と
業界が集まる会合であり、Political Issueな内容なので筆者に取っては参加
するだけ時間の無駄だからです。
以下 Asia Debian Mini-Conf 2005のスケジュールです。
Day 1: Monday, 28 February 2005
09:00-09:30 Registration
09:30-09:45 Welcome
09:45-10:45 Towards a Systematic Quality Assurance Approach in Debian
- Martin Michlmayr
10:45-11:45 How To Help Debian Without Deeper Knowledge
- Alexander Schmehl
11:45-13:15 Lunch
13:15-14:15 Status Report of Debian in Taiwan
- Andrew Lee
14:15-15:15 RAYS installer -- a customized debian-installer
- Stanley Peng
15:15-15:30 Break
15:30-17:00 Keysigning session
Day 2: Tuesday, 1 March 2005
09:00-10:00 Custom Debian Distributions
- Andreas Tille
10:00-11:00 Mass Management of Debian Desktops
- Scott Dier
11:00-12:00 Searching and CJK
- Takatsugu Nokubi
12:00-13:30 Lunch
13:30-14:30 The Debian Linux Kernel
- Simon Horman
14:30-15:00 The Linux Public Platform
- Wei Chen
15:00-15:15 Break
15:15-16:15 Bootstraping the M32R Architecture
- Yukata Niibe
16:15-17:15 The Many Uses of apt-listbug
- Masato Taruishi
17:15-17:30 Closing
日本から発表者は、産総研・FSIJ理事長 g新部裕氏、凸版印刷・FSIJ理事 野
首貴嗣氏、VA Linux 樽石将人氏でした。ADMCとCodeFestの日本人参加者は全
部で10 名です。Debianの中心人物であるMartin Michlmayrらがドイツから招
かれていました。
メインスポンサーはDebianベースの商用Distributionを開発している新華科技
(南京)系統軟件有限公司です。Roger Soはここの会社の香港ブランチに勤め
ているとのこと。日本企業であるNTT Dataもスポンサーとなっています。他に
日本の組織が1つ。これはスポンサー名に名前が出ていませんが産総研です。
中身は中国Open Source Weekとして開催されたという運営方法ではなく、いつ
ものDebian Confの規模の小さいものをこのタイミングで行ったという感じで
す。このタイミングに会わせたのは新華科技が中国政府へのアピールするため
だと考えた方がいいでしょう。
http://www.swhss.com.cn/jp/
* ADMC 2005
http://debian.org.cn/en/events/admc2005
スクール形式で40名程度の部屋を使っていましたが、後の方に椅子席をずいぶ
ん追加していたので実際には60名以上はいたと思います。登録は80名ぐらいだっ
たそうです。
Debianメンバーのプレゼンテーションは、主にDebianとは何かという初歩的な
内容です。どの内容も基本的なというか、導入的な話題と紹介を中心にしてい
るので内容的に特にこれはといったものはありません。
私が一番面白かったのはThe Linux Public Platformの時に出た質問です。こ
れは中国政府が御墨付で開発しているLinux関連の状況紹介のようです。
Dr. Wei Chenが妙にテンションがたかい演説口調でプレゼンをやっていました。
超早口の中国語、間違わない、よどまない、あなた百万回はそのネタ話してい
ませんか?という感じでほぼ30分間続きます。立て板に水というのはこのこと
でしょう。内容的には、中国政府もいろいろ開発に力を入れていますというこ
とをアピールしているものです。どこでもそうですが政府が何をしているなん
ていう話しはつまらない。
質問の時間がきてすぐに、広東省の公営Linuxセンターから来た高級工程師の
人がぱっと手をあげました。「Linuxの開発はコミュニティとの関わりが大切
である。そこで開発したコードはどのようにコミュニティに還元するのか?」
これに思わず、g新部氏と筆者は拍手し、親指をたててGood Job! と声援を送
りました。質問を受けた側は「百万回このネタを話したが、今まで、こんな質
問は一度として受けたことはない!」みたいな顔をしています。受け答えは役
人的な答えでしたが、まあ、それは仕方がないこと。しかし「コミュニティへ
の還元」と真面目に突込みを入れる姿を見て、中国も上意下達でやっているの
ではなく、本当の意味での草の根的な広がりが出てきているのだな、と感心し
ました。
** セッションの合間
今回のADMC2005は所詮は中国におけるDebianの顔見世興業です。プレゼンの内
容はあまり重要ではありません。そんなことをいてプレゼンした人ごめんなさ
い。重要なのは、アジアCJK圏の有力なDebianデベロッパがFace to Faceでコ
ミュニケーションできる機会を持ったという部分です。ですからセッションの
合間や、セッション後が最も重要な時間です。
今回私は特定非営利活動法人フリーソフトウェアイニシアティブ最高執行責任
者という肩書で参加しているので、台湾と香港からきたコミュニティ組織運営
に携わる人達といろいろと話しました。
香港はせっかく立ち上げようとしてもスポンサーがみつからない問題がありま
す。何かイベントをしようにも、先立つファウンドが集まらない。香港という
土地柄は流通ばかりで生産がないため開発への投資がない。その状況でスポン
サーを集めようにも集まらないという話です。中国にしても、台湾にしても開
発があるので、その流れでスポンサーを集めることはできる、しかし香港はそ
れがない。開発のために畑を耕す必要も種を撒く必要もないというのは香港ら
しい悩みです。
台湾は、愛好者的ユーザ会が多く、個々の活動が小さく閉鎖的な傾向にあると
いうのが問題のようです。そこそこに資源や資金を投入(といっても個人負担
できる程度ですが)できるので小さなコミュニティ活動には支障がない。一方、
個人の趣味をちょっと大きくした程度のコミュニティでは、活動自体を大きく
発展させていくことができない。こじんまりとやっていれば、そこそこにユー
ザ会は回り、それなりの満足(おもしろい)が得られる。規模を大きくしよう
とすると組織化する労力が必要で、それは趣味の範囲ではなくなる(つまらな
い)ので、やっぱり小さなままでいようとする力が働く、みたいです。そこそ
こに満足できているという贅沢な悩みが、この問題の底流にはあり、それは日
本の状況と良く似ています。
中国本土の人の問題は「英語をまともに話せる奴が見当たらない」ことでしょ
う。台湾人、香港人はちゃんとコミュニケーションできるのに、あの名門!清
華大学の学生でも、何をいっているか全然わからない。ちなみに去年のアメリ
カであったCRYPTO2004でセンセーショナルな発表をした山東大学の助教授も同
じだったことを思い出します。私の回りの中国本土出身者はみんな英語がうま
いのにどうしてだ!
それに積極的にコミュニケーションする姿勢がない特徴もそうです。自国の中
で閉じても独自でやっていける所は、コミュニケーションする必要がないから
そうなるのかなぁ。よくわかりませんが、コミュニケーションの問題は日本と
よく似てはいます。
ちなみに韓国に関しては、少なくとも私はだれも会わなかったのでわかりませ
ん。
ADMC2005だけじゃなく、日本でもそうですが、アジア圏のカンファレンスに来
て思うことはソーシャルプログラムが弱い。お互いが集まって情報交換するこ
とがメインであるという意識はまだまだ薄いようです。
小まとめ:
+ ソーシャルプログラムは非常に重要だが弱い
+ 前日にカクテルパーティーがあれば良かったな
+ レセプションも前後の時間に余裕が欲しい
+ 昼食も前後に時間に余裕が欲しい
* 大陸中国的時間尺度
勝手に私はCTSP (Chinese Time Scale Problem )と呼んでいました。ADMC2005
初日夜のレセプションはペキンダックのレストラン店にいきました。レストラ
ンは非常に良かったのですが、その前の、移動が大変。ホテルからしばらくバ
スに乗るのですが、まず、バスが来ない。結局1時間ぐらい遅れてやっとバス
が到着します。CodeFest2005の会場に向かうバスもそうでした。集合時間が、
あってなきがごとし。噂に聞く中国時間です。集合時間ぴったりに集まるのは
日本人とドイツ人の集団だけです。しかも、観光スケジュールとか、いきあた
りばったり。レセプションの後、夜の天安門まで観光に出たはいいのですが、
そもそも夜は天安門は閉鎖されています(そりゃそうだよな)。北京のくそ寒い
中、天安門付近を流浪していました。翌日も同じようにトライして、やっぱり
ダメでした。
他の日本人が不満をぐちる中、私自身はいきあたりばったりさ、時間のルーズ
なのはぜんぜん苦にならない、むしろ馴染んでいるくらいです。私の中の大陸
的な北海道人の血がそうさせているのでしょうか。ただし北海道人なので、寒
さには弱い。正確にいうと寒くてもいいけど、ちゃんと室内で身体が温まる所
がないと辛い。実は北京ではこれが一番辛かったです。
* CodeFest2005
ハッカーが集まってみんなでプログラムをしよう!Face to Faceで相談しなが
らやればあっというまに問題解決さ!という主旨の集まりです。こちらの方は、
私は当初は敵状視察ということでコードを書くという予定ではありませんでし
た。
朝8時30分が集合時間。でも出発したのは9時30分近くになってから。バスに30
分ちょい揺られます。幹線道路の広告パネルにはAMDやVIAの広告が延々と続き
ます。中国では「この通り全部」とかバルクで広告を売っているんだろうか?
さて、清華大学の前を通って、着いたのは中関村軟件園孵化器という建物。周
囲はつくば学園都市のような感じで、のっぺらーな所に、モダンな建物がぽつ
ぽつあるという感じです。まわりには立派なレノボのキャンパスがあったり、
中関村軟件園孵化器の別の棟には甲骨文(Oracle)が入っていたりしています。
同じ建物の中には、IBM Rational Software 軟件工程技術実験室という看板を
かかげている部屋などがありました。
コンピュータ教室をCodeFestの会場に使いました。席数(PC数)で35あります。
といっても、参加者のほとんどは自分のノートPC を持参し、それで開発して
いるので、あまり関係ありません。一応、入口付近には立派なCodeFest2005
のスケジュールが掲げられているのですが、あまり関係なく、一度部屋に入る
とあとは自分のペースで作業を進めていきます。
PCには新華科技のRAY LEというディスクトップ用Linuxが入っています。参加
者はrootのパスワードをもらって使えます。私は開発をする気がなかったので、
自前のハードウェアを持参せず、ここのLinux環境を使わせてもらいました。
g新部氏がM32Rのハードウェアを持ち込んで組み込みをハック。半田さん
(m17n.org)と守岡さん(CHISE)は多言語ライブラリをハック。田中さん(ruby)
はRuby本体をハック。まあ各々ハックしています。
まあ暇潰しにと、自分の作品であるサーバプログラムをOpenPKSD.ORGからダウ
ンロードしてインストールしてみます。ところが思いのほか簡単にインストー
ルできずに悪戦苦闘。自分のインストールマニュアルに追加事項やトラブル
シューティングを書き始めてしまいました。こんなはずじゃなかったのだけど...
小一時間もすると11時30分になり、混まないうちに社員食堂にいって早めの昼
食です。ビュッフェスタイルで、もちろん言うまでもなく中華です。麺類のコー
ナーでは刀削麺を目の前で作っています。私は、色々プレートにもりつけて、
ガツガツと食べていましたが、社員食堂と考えると、けっこう美味しいと思い
ます。毎日食べてもOKです。
さて、部屋にもどり、今度は、サーバが実際に動くかどうかのチェック。うま
く動いて一安心。でも、それだけではつまらないので、鍵の登録を若干早くす
るためのハックを開始。「本当は、視察だけで、午後からは一人で市内観光す
る予定だったのになぁ」とか思いつつプログラムのパフォーマンスのチューン
をしている自分がいました。
ここで日本人約1名リタイヤ。来た時から体調が悪く休憩室で寝ていたのです
が体調が復活せず、残念ながらここでタクシを呼んでもらいホテルに帰りまし
た。後に病院にいき対処してもらったそうです。
気が着くと既に晩飯の時間。残業食を出しているので、そこでまた食事。帰っ
てくると「夜食のために」と大袋リッツクラッカー、カップ麺、そして6本入
ソーセージが主催側から配布されています。このソーセージは、日本の魚肉ソー
セージではなく、鳥・豚・牛の肉をつかっているので全然味が違います。今ま
で中国圏で口にしたもので食べられないものはありませんでしたが、唯一これ
は食べられませんでした。
また、ふと気が着くと、既に8時を回っているのではないですか。ちょっとや
るだけだったのに。ちなみに他の参加者は会場で徹夜です。寝袋と休憩室が用
意されているので、寝ることもできます。みんなかんばれ!私は帰るけど。残
業帰りをまっているタクシーが何台もメインゲート前に止まっているので、そ
れを使いホテルへ戻りました。29元。
小まとめ:
+ やっぱり自分の開発環境を持っていくべきだなぁ。
+ 作業場所は、もっと自由に使えるタイプの方がいい。
+ 海外への高速ネットワークはMUST
+ 24時間以上ぶっつつけなので深夜の飲食が大切
+ ちゃんとした休憩場所の確保
+ シャワーがあるとハッピー
+ 病気の人が出た時のためなどホスピタリティスタッフの確保
+ 最初の1-2時間は、方向性やグループを作るためのディスカッションをすべき
+ 来る前にWikiで企画をたてておこう
+ 来てからもWikiで情報交換しよう
* 雑感・まとめ
今回は中国で始めてのユーザ側から立ち上げたオープンソース関連のカンファ
レンスだったので、様子見の雰囲気もなきにしもあらずだったのですが、小さ
いながらも色々な人が集まりなかなか面白かったです。ただADMC2005では韓国
からの積極的な参加がなくて残念。
香港、台湾にはアクティブなデベロッパがいることをあまり知らなかったので、
今回、それが大きな収穫でした。中国でも我々の感覚と同じ感覚の人達が草の
根的にはいるんだなぁ、と少し嬉しく思いました。
Asia Open Source の方はアジア圏内の各国からの政府から御声がかかった参
加者が色々会議をしていたみたいなのですが、まあ、かんばって下さいという
ことで。
ADMC2005によってアジア圏内の草の根レベルとしては確実に第一歩を踏み出し
たのではないでしょうか。中国国内の人達の参加を考えると、中国国内で行う
のがベターというのもわかるのですが3月の北京は寒いのでもう勘弁してくだ
さい。やるなら是非とも暖かい広州あたりで...
追記
国際空港の正規のタクシー乗り場で、ちゃんとディスパッチャーに従って乗り
込んだタクシーが白タクでした。国の表玄関で規則正しく乗り込んでいるのに
「それはいくらなんでも反則だろう」です。案の定、請求は予想の倍ぐらいふっ
かけて来ました。国の代表的な空港にもかかわらず、ライセンスなしのタクシー
が待つことができる空港タクシー乗り場は、世界中で、ここだけじゃないでしょ
うか。うむー、自由だ(ちがうって?)。
関連サイト
http://wiki.debian.org.cn/index.cgi?CodeFest2005
http://debian.org.cn/en/events/admc2005
http://debian.org.cn/en/events/acodefest2005
